会社員の副業と税金
会社員の給料にかかる所得税
会社員の給料(給与所得)には所得税がかかります。
月々、額面額から社会保険料を控除され、さらに所得税が源泉徴収されています。
源泉徴収は、いったん、仮の金額で所得税を前払しているようなものです。年末調整をすることで、年間の給料や賞与などにかかる所得税があらためて計算しなおされ、前払いの金額が大きければ還付されることになります。
年末調整では調整しきれない項目(医療費控除など)があれば、確定申告することでその分を調整します。
副業から得られる所得の種類
副業で収入を得た場合、それが何所得に該当するのか(所得区分)を確認する必要があります。
給与所得:勤務先から受ける給料、賞与などの所得をいいます。
事業所得:農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。
譲渡所得:土地、建物、株式等、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます。
不動産所得:土地や建物などの不動産の貸付け等によって生ずる所得をいいます。
雑所得 :利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得をいいます。
事業所得のメリット
所得区分を確認する必要があるのは、それにより税法上の扱いが異なるからです。
例えば、事業所得だと雑所得に比べて以下のようなメリットがあります。
給与所得等との損益通算
事業所得が赤字の場合、給与所得から赤字分を差し引くことができ、総所得を減らし所得税を減額することができます。
雑所得の場合には赤字でも、他の所得から差し引くことができません。
青色申告特別控除
複式簿記で記帳していること、貸借対照表及び損益計算書等必要書類を確定申告時に提出すれば、55万円の特別控除が受けられます。
さらに、仕訳帳及び総勘定元帳について電子帳簿保存を行っているか、または、電子申告をしている場合には、控除額が65万円にアップします。
青色事業専従者給与
配偶者や、親族に給料を支払っても、これらの給与は原則として経費で落とせません。
しかし、以下の条件を満たした場合には、経費で落とすことができます。
①青色事業専従者への支払であること
- 生計を一にしている配偶者や、その他の親族であること。
- その年の12月31日現在で15歳以上であること。
- その年を通じて6月を超える期間(事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その事業に専ら従事していること。
②「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること。
③届出書に記載されている方法により支払われ、しかもその記載されている金額の範囲内で支払われたものであること。
④青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること。
少額減価償却資産の特例の適用
通常10万円を超える備品等を購入すると、その年に全額を経費で落とすことはできません。
しかし、青色申告をしていると、 その年に全額を経費で落とすことができます。
純損失の繰越し、繰戻し
事業所得の赤字を損益通算して、なお控除しきれない赤字が残った場合には、その赤字額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。
また、前年も青色申告をしている場合は、赤字の繰越しではなく、赤字が生じた年の前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることもできます。
事業所得なのか雑所得なのか
事業所得なのか雑所得なのか、どのように判断されているのでしょうか。
最高裁判決(昭和56年4月24日)では、判断の一応の基準が以下のように示されています。
事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう。
また、平成26年9月1日裁決の中で、以下のような基準が示されています。
「事業」については、その意義自体について一般的な定義規定を置いていないところ、その意味するところは、自己の危険と計算において独立して行う業務であり、営利性・有償性を有し、かつ、反復継続して業務を遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められるものであると解される。
ある所得が事業所得に当たるか否かを判断するに当たっては、当該所得が社会通念上「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる営利性、有償性、反復継続性をもった活動によって生じる所得か否かによって判断すべきであり、
「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる活動といえるかどうかは、自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無、その者の精神的肉体的労務の投入の有無、人的・物的設備の有無、その者の職業・経験及び社会的地位等を総合的に勘案して判断すべき
「事業」といえる程度の規模・態様においてなされた活動といえるか否かについて以下のように判断されています。
A 自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無
本件業務による収入は、不定期に生じてはいるものの、執筆活動に類型的に必要と考えられる取材活動や営業活動の経費が請求人の負担とされていることからすると、本件業務は自己の計算と危険において行われているというべきである。
ただ、本件業務に必要な取材活動や営業活動を行っていた旨答述するが、そのことを裏付ける証拠等は一切なく、これらの取材活動や営業活動の事実は認め難く、少なくとも企画遂行性に乏しいというべきである。
また、専門分野等に関する執筆のほかに歴史法制史関係あるいは歴史ミステリーに関係する分野の原稿を執筆した旨答述するが、それを裏付ける書面及びデータは残っておらず、作品タイトルの一覧表のようなものも保存されておらず、また、実際にこれらの内容の執筆を行ったことによる収入金額もないため、これらの内容の原稿を執筆していたとは認められない。以上からすると、本件業務は自己の計算と危険においてされているということはできる。しかしながら、請求人が実際に本件業務に関し取材活動や営業活動を行っていたとは認め難いか、又は執筆に至った事実が認められないものであることからすれば、その企画遂行性は、仮にあったとしても乏しいものにとどまっていたと認められる。
B 精神的肉体的労務の投入の有無について
大学等において平日に週4日程度の講義を行い、それ以外の時間に本件業務としての講演や執筆活動等を行っていることが認められることからすれば、本件業務に一定の精神的肉体的労務を投入しているとしても、限定的なものにとどまっていたと認められる。
C 人的・物的設備の有無について
パソコンやプリンター等の備品を使用して本件業務を行っていたが、それ以外の物的設備は有しておらず、また、本件業務のために使用人を雇っていない。
なお、請求人は赤字のために使用人を雇えないのは普通のことである旨主張するが、ある程度の事業規模があれば赤字であっても人員を配置しなければ事業自体が遂行できないのであるから、使用人の有無を「事業」といえる程度の規模・態様においてなされた活動といえるか否かの判定要素の一つとすることは不合理ではない。
D 職業・経験及び社会的地位について
請求人は、平成21年ないし平成23年においてM大学で任期付の准教授として勤務し、同大学から生活を営むのに十分な給与収入を得ていた。
以上の点からすると、本件業務に関して、自己の計算と危険において簡易ながら一定の物的設備を整え執筆や講演等の活動を行ったと認められるものの、他方で、その企画遂行性の程度は仮にあったとしても乏しいものにとどまっており、本件業務に投入している精神的肉体的労務も限定的なものであり、さらにM大学から生活を営むのに十分な給与収入を得ていたことからすれば、本件業務は、社会通念上「事業」といえる規模・態様においてなされた活動とまではいえない。
会社員が週末に片手間でやるレベルでは、難しそうです。
ただ、国の政策として副業、兼業の普及促進が図られており、会社員としての働き方も多様化していくことが想定されます。
会社員を続けながら、副業、兼業が「事業」といえる程度の規模・態様になるケースも多くなってくると思われます。
状況に応じて適切に所得区分を判定し確定申告しましょう。

